おもてなしを Oitan

べっぷの宿 ホテル白菊 代表取締役西田 陽一

民家ゲストハウス In Bloom Beppuオーナー花田 潤也

コロナに負けない!別府の観光業から見る大分県の未来

大分県別府市といえば、国内だけでなく海外からも注目される観光地の一つ。7種の異なる泉質の温泉が楽しめるほか、グルメや自然あふれる空間が人々を魅了してきました。
今回は、「おんせん県おおいた」の泉都として知られる別府の観光業に携わる西田陽一(にしだよういち)氏と花田潤也(はなだじゅんや)氏に対談していただきました。
大分県で生まれ育った西田氏と、別府に魅了され県外からやってきた花田氏が、別府の観光業から見る大分県の将来について語ります!

別府で観光業に携わった経緯
花田氏(左)と西田氏(右)
▲温泉のように熱く語る2人
In Bloom Beppuオーナーの花田氏(左)とホテル白菊社長の西田氏(右)

西田氏

花田さん、こんにちは。「べっぷの宿 ホテル白菊」で代表取締役を務めております西田陽一です。
今日は観光を切り口に私たちの経験をみなさんにお伝えできればと思いますので、よろしくお願いします。

花田氏

西田さん、こんにちは!僕は別府で古民家ゲストハウス「In Bloom Beppu」でホストをしている花田です!
熊本出身ですが、大分・別府が好きすぎて宿を開きました(笑)。
こちらこそ、今日はよろしくお願いします!

西田氏

ご出身は熊本なんですね。別府生まれの私にとっても、別府が好きだと言っていただけるのは嬉しいですね。

花田氏

西田さんはホテル白菊の経営以外にも、大分県や別府市のPR動画に出演したり、別府市旅館ホテル組合連合会の会長をされていたりと、幅広く活躍されていますよね。

西田氏

そうですね。ただ、ずっと別府にいたわけではないんですよ。
現在59歳で来年には還暦を迎えますが、大学卒業後の4年間は大阪の旅行代理店で働いていました。
そこから家業を継ぐために戻ってきて、今年で34年目になりますね。

花田さんはどういった経緯で別府に宿を開くことになったんですか?

花田氏(左)と西田氏(右)

花田氏

僕は現在41歳で、10年ほど前まではプロパンガス屋の跡取りだったんですよ。
熊本で結婚して子どももいるんですが、2016年の熊本地震を経験したことで、人生について考えさせられました。
もともと別府の温泉やそこに住む人たちの温かさに惹かれて、別府への移住を考えていましたが、これをきっかけに「自分の人生を後悔なく生きたい!」と思うようになって、そのスタートとしてIn Bloom Beppuを開いたんです。

西田氏

県外からやってきて旅館業を始めるって、*油屋熊八(あぶらやくまはち)みたいですね。
熊八さんは、別府のキャッチフレーズ「山は富士、海は瀬戸内、湯は別府」 などの素晴らしいプロモーション活動を行いましたよね。

別府のキャッチフレーズ

花田氏

そうですね。熊八の大事にしていた「旅人を懇(ねんご)ろにせよ」(注釈)という言葉は僕も大好きです。
別府には伝えたいものが山のようにあるので、僕自身一緒に楽しませてもらっているんですけどね。(笑)
ただ、熊八イズムっていうか、別府観光のベースを作った功績は大きいですが、いつかは超えなきゃならない存在ですよね。

*油屋熊八(1863年〜1935年)は、別府観光の基盤を作り、別府の奥座敷である由布院を開発したほか、地獄めぐりや観光バスの導入、やまなみハイウェイの建設など全国に別府・大分の魅力を国内外に伝えた人物。別記事「ピカピカのおじさん油屋熊八と巡る!別府観光ツアー」でも紹介しています。

コロナ禍は大分県の観光業にどんな影響を与えたのか
ホテル白菊の自動検温システム。(提供:ホテル白菊)
ホテル白菊の自動検温システム。(提供:ホテル白菊)

花田氏

2018年7月に古民家ゲストハウスを開き、順調に進んでいると思ったんですが、コロナの影響は大きすぎましたね。今年の4月5月は休館にして、熊本に帰っていました。

西田さんの方も影響はありましたか?

西田氏

西田氏

観光産業は人が動かないと成り立たないので、うちだけでなく宿を経営している方は廃業が脳裏をよぎったんじゃないでしょうか。
昨年はW杯などで活気がすごく「ここが別府なのか!?」と思うくらい外国人が多く賑やかだったんですが、今年はコロナが流行し6月末くらいまで宿を閉めざるを得ない状況でした。
Go To キャンペーンのおかげで、11月時点では、なんとか例年並みの勢いを取り戻しつつありますね。

花田氏

そうですよね……。僕も、コロナの自粛期間は熊本に戻って家でボーッとしていました(笑)。
ゲストハウスを続けることについては、奥さんも大反対で(笑)。
ただ、やっと夢を叶えて、いろんな繋がりができ、大分の魅力をお客さんに伝えられている最中だったので、この先どうしようかずっと悩んでいました。

西田氏

ホテルや観光、飲食などもコロナからの危機を乗り越えるというより、まだまだもがいている真っ最中です。
ただこういう状況だからこそ、みんなで知恵を出しながらピンチをチャンスに変えて行動していくことが大事じゃないのかなと思っています。

花田さんはインバウンドにも積極的に取り組んでいると聞きましたが、大変だったんじゃないですか?

花田氏

そうですね。以前は外国の方もたくさんきてくれていたので、別府の名所によく連れて行っていましたが、コロナの影響でインバウンドもゼロになりましたね。
ただ、「もうダメだ」と思っていた時に友人からの助言もあり、新しい取り組みを始めました。

西田氏

どういったことをされているんですか?

オンライン宿泊の様子(提供:In Bloom Beppu)
▲オンライン宿泊の様子。手のポーズは温泉マーク(提供:In Bloom Beppu)

花田氏

まず、7月から始めたのはオンライン宿泊です。オンラインでビデオ会議ができるzoomを使い、In Bloom Beppuでオンライン宿泊体験をしてもらうというものです。
全国から参加者が集まるんですが、思っていた以上に盛り上がっていて、最近はテレビの取材もありました。
あとは、オンライン宿泊を体験した大学生たちがチームを組んで、SNSを使った地域のPRなども行ってくれています。

西田氏

大学生の協力も得られるなんて、すごいですね。

花田氏

ホントにありがたいです!学生たちと一緒に別府駅市場などを回って、ディープな魅力のあるスポットを巡ったこともありました。

オンライン宿泊に関して言えば、これまで対面で別府の魅力を伝えていたんですが、「オンラインでも別府の魅力を伝えられるな」と実感しましたね。

西田さんもコロナ中は宿泊以外の取り組みをしていたんですか?

西田氏

コロナで休館していたGW期間中のことですが、別府市の「エール飯」というプロジェクトに携わりました。

別府エール飯(提供:一般社団法人B-Biz Link)
▲テイクアウトを推し進める別府エール飯。(提供:一般社団法人B-Biz Link)

西田氏

ホテルだけでなく飲食業界も大きなダメージを受けていたので、ホテル白菊の駐車スペースを使って、テイクアウトできる料理の販売にも協力したんです。

花田氏

たしかに、自粛期間中は外食も厳しい状況でしたよね。

西田氏

そうなんです。別府市内で営業している飲食店が「地域のみんなで一つになってやっていこう!」と、1週間ごとに日替わりで食事を提供していました。

花田さんからも学生の話がありましたが留学生や県外から来た学生達が「別府は第二の故郷だ」と言ってくれているのをよく聞きます。おんせん県おおいたや別府という所はもっと活気づくポテンシャルを秘めた場所なんじゃないでしょうか。

おんせん県おおいた・別府は可能性の眠る場所!
別府湯けむり

花田氏

僕も、ホントに別府はすごい場所だと思っています!人口は10万人ほどですが、こんな魅力的な場所だったら100万人いてもおかしくないですよ!

西田氏

たしかに、地域の魅力発信にはもう少し力を入れていきたいところですね。
私は、「海との接点をもっと生かしたいな」と考えています。

花田氏

海との接点ですか?

西田氏

別府って、砂蒸し風呂の情景などの原風景があったんですが、沿岸を通る国道や旅館街ができて旅行者と海との接点が減ってきたんです。
実際に、去年の10月に外国人の方が来て「海で泳ぎたい」と言ってきたことがありました。

花田氏

10月って、寒そうですね(笑)。

西田氏

実際、目の前に海がある旅館もありますし、土地の魅力を生かしたサービスを充実させれば、お客さんはもっと来るんじゃないかなと思っています。
こういう時代だからこそ、温泉郷としての魅力をもっとブラッシュアップしつつ、街並みの保全などの地道な活動も継続していけば、大化けする可能性がありますよね。

花田氏

県外出身の僕から見ても、こんな宝箱みたいに魅力のある街はないと思います。別府は温泉のイメージが強いですが、山も海もあって、その中の一部に温泉があると思っています。
以前、ヨーロッパ出身の方の観光案内をしたことがあって、棚田に連れて行ったんですが、彼らは「これが見たかった!」と感動していました。

観光って、新しく作られたものよりも、元々そこにあるその場所ならではの魅力を伝えることが必要なんだなって思いましたね。

西田氏

旅館をやりながら観光案内って、花田さんは本当に油屋熊八みたいな人ですね。

花田氏

僕も一緒になって楽しんでいるだけなんですけどね(笑)。
旅館によってはパンフレットだけ作って満足しているところもあるんで、道先案内人がパッションを持って魅力を伝えていかないといけないとは思っています。
ただ、僕だけじゃなく別府の人たちにも協力してもらって、「これは伝えたい!」っていう別府の魅力ある場所に案内しないと意味がないんです。

これからの時代を生きる若きおんせん県民へ
花田氏(左)と西田氏(右)

西田氏

最初にもお話しましたが、コロナ禍で事業も大変です。
人と人との接点が少なくなってきて、大変な世の中になってきていると思います。
ただ、こうした状況がずっと続くことはなく、明かりが見えてくる時が必ずあります。

若い人たちには、できなくなってきていることよりも、自分たちにできることを見つけてチャレンジしていってもらいたいです。
また、今だからこそ焦らずに自分を磨いていき、近くにいる仲間を大切にしてもらいたいですね。

花田氏

コロナによって「昨日までよかったことが今日は通用しない」ということが、はっきりしました。
自分たちがたくましく生きていくためには、自分自身のなかでいろんな思考を巡らせていくことが大切です。

僕たちが住む別府や大分県にはおもてなしのDNAがあり、他所にはないものをたくさん持っています。ぜひ地域の魅力や人々と触れ合い、山あり谷ありの人生を楽しんでいってもらいたいですね。
そして、別府の人口100万人を目指して頑張ってほしいです!

西田氏(左)と花田氏(右)
西田陽一さんの経歴

1961年大分県別府市生まれ、1984年慶應義塾大卒業。1987年まで大阪の旅行代理店で勤務した後、家業のホテル白菊へと入社。2005年に代表取締役社長に就任。2017年から「大分県旅館ホテル生活衛生同業組合」の理事長となるなど、別府だけでなく大分県の観光業を支える。

(提供:ホテル白菊)
▲(提供:ホテル白菊)
ホテル白菊

ホテル白菊は、1973年に西田さんの父と祖父が12階建ての宿を開いたのが始まりだ。「旅人の心も体もあったまる宿」をコンセプトに、丁寧なおもてなしが宿泊者からも好評を得ている。
創業時と変わらぬ空間を残した別邸「菊乃間」では、日本庭園を見ながら食事が楽しめるほか、スカイダイニング「ガーランド12」では別府の街並みや別府湾を一望できる眺望が楽しめる。

花田潤也一さんの経歴

1979年熊本県生まれ。兄と一緒にガス会社を継ぐ予定だったが、2016年の熊本地震での震災を機に、2018年7月から別府でゲストハウス「In Bloom Beppu」の運営をスタート。
コロナの影響を受けた2020年7月には、ゲストハウスを活用したオンライン宿泊のほか、大学生と共に地域の魅力をPRする活動を行っている。

(提供:In Bloom Beppu)
▲(提供:In Bloom Beppu)
In Bloom Beppu

In Bloom Beppuは、古民家を活用したゲストハウス。家紋入りの鬼瓦や雲龍の鏝絵(こてえ)など、近代和風建築の趣きが残されている。
ゲストハウスの形態をとっているため、バスやトイレ、キッチンなどが共用だが、宿泊者同士の交流が楽しめるのも魅力だ。
https://www.inbloombeppu.com/

【ミニコラム①】
温泉だけじゃない!別府のおすすめスポット

日本一のおんせん県として知られる大分県の泉都別府市ですが、見所は温泉だけではありません。ここでは、西田さんと花田さんが「秘密にしたいほど良い!」というスポットを紹介します。
県内に住む方だけでなく、旅行で訪ねる方もぜひ足を運んでみてください。

◎西田さんおすすめ!八幡朝見神社

夫婦杉

境内のそばに立つ2本の夫婦杉が特徴的な八幡朝見神社。日の出の時間に杉の間から海の方角に目をやると、「ゆっくりと昇る朝日から最高に力をもらえる」とのこと。このほか、八坂神社と宮地嶽神社の3箇所が地元民のみぞ知るパワースポットだそうです。

八幡朝見神社の詳細

[住所]大分県別府市朝見2-15-19
[アクセス]別府駅から徒歩約20分、「朝見バス停(山側)」または「御幸橋バス停(海側)」下車すぐ

◎花田さんおすすめ!野口天満宮のウラ

野口天満宮

祭神に菅原道真を祀る野口天満宮は、花田さんお気に入りのスポット!野口天満宮の裏に立つ杉の木や、そこから見える海の景色が「これぞ別府」を体感できるそう。「なんてことはない場所ですが、ここから眺める朝日は絶景です!」と語る花田さん。
温泉が目立つ別府ですが、自然に囲まれた空間で目にする朝日は格別のようです。

八幡朝見神社の詳細

[住所]〒874-0906 大分県別府市天満町16-14
[アクセス]別府駅から徒歩約15分、「石垣幸橋バス停」または「天満町バス停」「境川小学校前バス停」下車すぐ

【ミニコラム②】
別府ならではの湯治「機能温泉浴」

泥湯

7つの異なる泉質の湯が湧く大分県ならではの入湯方法として「機能温泉浴」がおすすめです。
この機能温泉浴とは、泉質の異なる湯に浸かることで温泉が持つ効果を高めるというもの。幅広いパターンがありますが、ここでは2つご紹介します!

<美肌効果>
美肌効果を狙うなら、硫黄泉のあとにナトリウム塩化物泉の温泉に入ってみましょう。クレンジング効果のある硫黄泉で体の汚れを落とし、ナトリウム塩化物泉が肌を保湿してくれます。

<代謝を促す>
代謝を高めるなら、蒸し湯と砂湯がおすすめです。鉄輪温泉で楽しめる蒸し湯は、床の上に薬草が敷かれ、じんわりと体を温めてくれます。その後、遠赤外線効果の高い砂湯が体の芯まで温め、心地よい汗が止まりません。

このほかにも、泥湯や炭酸温泉など、別府にはさまざまな特徴を持った温泉が湧出しています。
別府を訪れた際は、ぜひ試してみてください。