宇宙を掴むOitan

大分でアジア初の快挙!宇宙旅行が大分から!?立役者へ独占インタビュー!

大分県商工観光労働部長
2020.10/27
飛行機と衛星

▲Cosmic Girl releases LauncherOne mid-air for the first time during a July 2019 drop test. Credit: Virgin Orbit/Greg Robinson.

2022年を目標に、大分県国東市にある大分空港が「宇宙港」として人工衛星を打ち上げる拠点となります。
今回は、「宇宙港実現」という夢のある計画の最前線で戦っている高濱航(たかはま・わたる)氏にインタビューをしてきました!
大分市で生まれ育った高濱氏は早稲田大学を卒業後、経済産業省に入省し、ヨーロッパなどでの勤務を経て、2018年に大分県商工労働部長(現在は商工観光労働部長)として大分へと戻ってきました。

宇宙港の設立に至るまでの経緯や、宇宙港という存在が県内にどういった可能性をもたらしてくれるのか、高濱氏が夢のある話しをしてくれました。

そもそも宇宙港って何なの?
高濱部長

▲高濱部長

まずは、「宇宙港が何か」というのをお話した方が分かりやすいかもしれませんね。
この宇宙港は、宇宙旅行や人工衛星の打ち上げを含めて「宇宙の入り口たる宇宙の港」という位置付けです。

今回、私たちが取り組んでいるのは、国東市の大分空港を活用した宇宙港から人工衛星を打ち上げるというものです。
アメリカで宇宙開発の事業を行っているヴァージン・オービットと提携し、小型の人工衛星を乗せたロケットを大型の航空機に装着して打ち上げます。

2年後のこととは言っても、なかなか時間が足りない状況ですが、人工衛星の打ち上げを実現するために全力で取り組んでいます。

宇宙港に着手することとなった経緯

宇宙港の取組がスタートしてから6ヶ月ほどしか経っていませんが、県だけでなく地元の企業や様々な方とのご縁があり、ここまでたどり着くことができました。

気象観測衛星のテンコウが宇宙へのきっかけに

テンコウ

▲地球低軌道環境観測衛星てんこうを載せたH-IIAロケット40号機/温室効果ガス観測技術衛星2号「いぶき2号」(GOSAT-2)及び観測衛星「ハリーファサット(KhalifaSat)」の打ち上げ (クレジット:三菱重工/JAXA)

宇宙港に取り組むことになったのは、平成30年に種子島から打ち上げられた「地球低軌道環境観測衛星てんこう」がきっかけです。

てんこうは九州工業大学の学生が開発したものですが、開発のために彼らの先生が福岡の中小企業に「一緒に人工衛星を作りたいのですが、一緒にやりませんか?」と、声をかけていたんです。
しかし、当時は誰も協力してくれない状況だったようです。

そんな中、大分で声をかけたら中小企業4社が勇気を持って手を挙げてくれました。そこから宇宙へ関わり始めたのですが、協力してくれた企業もいろいろと悩みながら事業に取り組んでくれました。

てんこうが出来上がったのは平成30年10月のこと。そこから我々が中小企業の方から聞いたのは「すごい大変だったけど、もの凄く良い経験になった」という声です。

我々も「せっかく人工衛星の打ち上げに成功したのだから、これを何かに繋げたい」と思い、新しい取組を模索していました。

日本の宇宙事情を変えるべくスペースポートジャパンと繋がった

スペースポート

▲©2020 canaria,dentsu,noiz,Space Port JapanAssociation.

てんこうの打ち上げに成功してから、「何か新しいことができないか」と多くの情報を集めていました。そんな時、日本にスペースポートを開港することにより、宇宙関連産業の振興を目指す一般社団法人スペースポートジャパンから宇宙港の候補地に関するお話がありました。

スペースポートジャパンは、女性宇宙飛行士の山崎直子さんが代表理事を務めている団体で、「日本にももっとロケットや宇宙船を飛ばせる場所、スペースポートを作りたい」という想いを持っていました。

人工衛星を打ち上げる場所が種子島と内之浦しかなく、人工衛星や宇宙関連のベンチャーができても、日本から打ち上げられることはほとんどありません。
実際、打ち上げを考えている企業にアンケートを取ったら、20回ほど打ち上げる機会があることが分かりました。

しかし、せっかく日本でベンチャーが育っているのに、タイミングやコスト、手続きのスムーズさといった面から、多くの企業が海外で打ち上げようとしているのが現状です。

どの企業も「できるなら日本で打ち上げたい」と考えているのに、実際はできない。これは日本としてもったいないなと感じています。
そうした背景があり、スペースポートジャパンからいただいたお話が「ヴァージン・オービットが、打ち上げに適した場所を日本で探している」という内容でした。

ヴァージン・グループが認めた大分県の魅力
Virgin Orbit

▲Virgin Orbit teammates prepare for loading operations ahead of the company’s first orbital Launch Demo. May 25, 2020. Credit: Virgin Orbit/Greg Robinson.

スペースポートジャパン経由でヴァージン・オービットのことを聞き、何度も意見交換させていただいた結果、「難しいことですが、ぜひ大分で実現したい」という旨をお伝えしました。
大分県以外にも宇宙港の候補地があったと聞いていますが、今回の宇宙港の事業を大分県が勝ち取れたのは、いくつかの理由からです。

  1. 3000m級の滑走路がある
  2. 地域の産業が長い歴史を持っている
  3. 部署の垣根を超えたチーム力
大分空港

▲3000m級の滑走路がある大分空港(提供:大分空港ターミナル)

まず、宇宙港に着手するための要件として「3000m級の滑走路」が必要でしたが、過去に大分県が携わった延伸事業のおかげで大分空港はクリアしていました。
そこからヴァージン・オービットと話す機会をいただき、互いの国を訪問するなど、密に関わらせていただいたんです。

交渉の中で大分県の魅力も伝えたんですが、ヴァージン・オービットからは「インフラは問題ありません」と言われ、さらには観光の強みが評価されました。

宇宙関連の事業には多くの投資家が出資しているため、打ち上げの際は投資家たちを招待する必要がありますが、ほとんどの打ち上げ場所が砂漠の真ん中や島の端っこなので、「打ち上げを見て終わり」です。
しかし温泉や自然、歴史などの観光に強みを持つ大分なら、投資家や技術者も十分に楽しめます。インフラだけでなく、大分県で滞在することの魅力がヴァージン・オービットから高く評価されました。

そして、私たちが自信を持っているのは、チーム力です。企業立地や先進技術挑戦室という部署を含めて、ヴァージン・オービットとの交渉はスピーディーに進めました。「確実に実現しろよ!」と背中を押してくださった広瀬知事や、関係部局が前向きに協力していただいたおかげで、今回の宇宙港のプロジェクトを勝ち取れたと自負しています。

宇宙港が大分を盛り上げる起爆剤になる
別府街並み

ヴァージン・オービットとのあるロサンゼルスと日本の時差は16時間ほどありますが、時差を気にすることなく交渉を進めてきました。密にやりとりすることを心がけていたので、連絡がきたらすぐに返信していましたが、宇宙港に関する提携が決まったのは今年の4月2日の深夜でしたね。

そこからすぐに発表することになりましたが、世界中でコロナが蔓延していたタイミングだったので、「否定的な声もあるだろうな」と覚悟していました。
けれど、「コロナの時だからこそ、アジア初の宇宙港が明るい希望となって欲しい」という想いで4月3日に発表したんです。
ただ、予想以上に世論の反応が良かったのは嬉しかったですね。

たまにご質問をいただくのですが、現段階で決まっているのは2022年の人工衛星の打ち上げなので、大分で新たな産業が生まれるかは分かりません。
しかし、大分に宇宙港という核ができるので、まずは企業への衛星データの利用促進や星を見るイベントなどを視野に入れています。

実際に、大分県が協力しているウミトロンという会社は、人工衛星から送られてくる海洋環境データを使った水産養殖業向けのサービスを展開しています。ほかにも、衛星データはトレジャーボートの接岸にも役立ち、プロが操縦しなくてもピタッと接岸できるようになります。

まだ2年後のことなので、どういった広がりができるかは予測できない部分もありますが、大分県の人たちが何らかの形で宇宙に関わってもらいたいと考えています。

「大分にいても夢は実現できる!」と知ってもらいたい
高濱部長

▲高濱部長

今回、私たちが宇宙港実現による、人工衛星の打ち上げにチャレンジしているように、大分県には底知れないポテンシャルがあります。

「勉強するなら東京に行かないと」という方もいるかもしれませんが、大分にいても自分の可能性を広げられることを多くの人に感じてもらいたいですね。
今後は政府が地方創生に力を入れていくという話しもあるので、「大分だから…」と消極的にならず、大分県民がプライドを持って国際交渉に臨んでも良いと思います。

私も高校を卒業してから県外に出ましたが、これから県外に出たいと考えている人も、「大分県はすごい場所なんだ」と知ってもらいたいです。自分の地元にプライドを持ってもらい、できれば数年経ってからでも大分に戻ってきてもらえれば嬉しいですね。

また、大分に残りたいと言う人には、私たちが皆さんのポテンシャルを発揮するための機会を惜しみなく提供していきたいと考えています。
県民と自治体のそれぞれが自分の可能性や地域の可能性を信じ、共に良い未来を作っていきたいですね。

高濱航さんの経歴

1978年大分市明野生まれ。上野丘高校を卒業後は早稲田大学理工学部へと進学し、大学院に1年ほど在籍。
2002年には経済産業省入省し、貿易経済協力局通商金融・経済協力課や大臣官房総務課で勤めた。2009年から海外へと渡り、米国カリフォルニア大学へと留学したほか、在ブリュッセル欧州連合日本政府代表部として活躍。
2018年には大分県へと戻り、大分県商工労働部長に就任。現在は商工観光労働部長としてアジア初の「宇宙港」実現に向けて奔走している。

【ミニコラム①】
宇宙を感じてみよう!大分県内で星空が綺麗なスポット

自然あふれる大分県にも、星空を楽しめる場所は数多くあります。ぜひ実際に訪れて、あなたのお気に入りのスポットを見つけてみてください。

◎久住高原

久住高原

▲(提供:九州アルプス商工会青年部)

大分県竹田市で「美しすぎる星空10選」にも選ばれた久住高原は、阿蘇くじゅう国立公園の一角にあります。季節ごとの移ろいを感じられる自然豊かなスポットなので、日中は自然散策を楽しんでも良いでしょう。空気が澄んでいるので夜の星空はクリアに見え、宇宙を感じられるひと時を過ごせます。

久住高原の詳細

住所/大分県竹田市久住町大字久住4050-2

アクセス/大分自動車道「玖珠IC」より約1時間

◎牧ノ戸峠

牧ノ戸峠

▲ (提供:Instagramアカウント@kuala.hippo)

やまなみハイウェイの最高地点にある牧ノ戸峠は、先ほどご紹介した久住高原の近くにあります。登山スポットとしても人気があり、休日は多くの登山客が訪れます。牧ノ戸展望台からの景色が素晴らしく、九重連山や阿蘇五岳の山容が望めるので、眼前に広がる星々と共に大分の自然をお楽しみください。

牧ノ戸峠の詳細

住所/大分県玖珠郡九重町田野

アクセス/大分自動車道「九重IC」より車で約40分

◎空の公園

空の公園

▲(提供:Instagramアカウント@fuji_sun___)

佐伯市の「豊後くろしおライン」上にある空の公園は、太平洋を一望できるスポットです。どこまでも続く日向灘の景色はもちろん、夜の星空も格別の見応え。標高約160mの位置からは余計な光はほとんどなく、夜空にきらめく星々の美しさに心を奪われます。また海から顔を出す朝日も見どころの一つです。

空の公園の詳細

住所/大分県佐伯市米水津大字色利浦

アクセス/東九州自動車道「佐伯IC」から車で約35分

【ミニコラム②】
星空だけじゃない!大分でおすすめの天体観測施設

自然に包まれながら夜空を見上げるのも感動的なひと時を過ごせますが、もっと宇宙を感じたい方は天体観測施設へ足を運んでみては?
ここでは大分県にある天体観測施設を2つご紹介します。

◎関崎海星館

関崎海星館

▲(提供:大分市生涯学習施設 関崎海星館)

大分市の東端に建つ「関崎海星館」は、天文台や展望施設を備えた生涯学習施設です。1階の展望室では豊予海峡を眺めながらゆっくりと流れる時間を楽しめます。
また、天文台は2階にありHα太陽望遠鏡や口径60cmの天体望遠鏡を使って、昼夜を問わず天体観測が可能。大分から宇宙を覗ける絶好のスポットです。

関崎海星館の詳細

住所/大分県大分市佐賀関4057-419

アクセス/東九州自動車道「大分宮河内IC」から車で40分

天体観察料/420円(大人)、210円(高校生)、無料(中学生以下・障がい者手帳をお持ちの方小中学生)※入館は無料

休館日/火曜(祝日の場合は翌平日)、年末年始(12/29~1/3)

◎梅園の里 天球館

梅園の里 天球館

大分県国東市にある「天球館」は、江戸時代の自然哲学者である三浦梅園を生んだ「梅園の里」に建てられた施設です。梅園は遥かなる天に想いを馳せた人物であり、天球館では梅園の願いを叶えるかのように宇宙の神秘に触れられます。
天体望遠鏡の口径は65cmと、県内では最大の規模。関崎海星館と同様に、昼も夜も天体望遠鏡が使えるので、時間や季節とともに移ろう宇宙の表情を覗いてみても良いでしょう。

梅園の里 天球館の詳細

住所/大分県国東市安岐町富清2244

アクセス/大分空港道路「安岐IC」より車で約20分

天体観察料/500円(大人)、300円(高校生)、200円(小中学生)

休館日/火曜(祝日の場合は翌日に振替)

よく読まれている記事

関連記事

share

share