表現を楽しむOitan

仏像オタクニストがたどり着いた自分らしい生き方

仏像オタクニストSALLiA

2022.03/11

 「ハイパーメディアクリエイター」や「百獣の王を目指す男」などなど、なんじゃそら!? とツッコミたくなる肩書きの人、胡散臭いと思いつつ、ついつい気になっちゃいますよね。

  今回お会いしたSALLiAさんは、作って歌って踊れるアーティストであり音楽家、ライター、そして、『仏像オタクニスト』

 最後の肩書きで「…ン?」と違和感を持ってしまったアナタ、私も最初はそうでした(小声)。前半の肩書きはクリエイターとして通じるものがある気がしますが、なぜその並びに「仏像オタクニスト」!?と不思議に思っちゃいますよね。ね? ここまできたら本人にお話を聞くまでモヤモヤがおさまりません!

肩書き渋滞のアラサー女子SALLiAって何者?

 SALLiAさんにお会いできたのは1月某日、大分市内のとあるオフィスでした。その日の彼女は切りっぱなしのボブスタイルに、髪色はパープルのグラデーション。コーディネートもTHE・アーティスト!を思わせる個性的なスタイリングでしたが、初めましての挨拶から名刺交換、インタビュー中もとても優しく謙虚な方で…¬。エキセントリックなイメージが強すぎた彼女の、ある意味での“普通の女性”な部分を見た気がしました。

 別府市出身・在住のSALLiAさんは32歳。本名である畑田紗李名義で2011年にアーティストデビュー後、精力的に音楽活動を行っています。作詞、作曲、編曲、ミックス、マスタリングまでを一人で手掛け、数々の楽曲をリリース。さらに、ライターでもあるSALLiAさんは現在、2冊の著書を出版しています。今回は、そんな彼女の不思議な肩書き「仏像オタク二スト」に迫ります!

仏像オタクニストが教えるホトケのススメ
【その①】一番クセスゴな肩書き「仏像オタクニスト」を深掘り

 “仏像オタクニスト”とはSALLiAさんによる造語で、仏像や仏教を生きるツールとして魅力的に発信する職業であるとのこと。これだけだとまだ頭の中は?????なので、まずは彼女の仏像オタクニストとしての主な活動を紹介しましょう。

・本やコラムの執筆活動
・お寺などでの講演会、トークイベント
・テレビやラジオなどをはじめとするメディア出演
・自分で行える心の筋トレ=マインドフルネスカウンセラーとしての企業研修や各種講座

 それらの活動に共通しているのは、哲学としての仏像や仏教をツールに「自分で自分を救っていく方法を発信している」ということ。お釈迦様の言葉にも「自灯明(じとうみょう)」という言葉があり、そこには「救世主を求めず、依存せず、自分の心を拠り所に生きることが本当の救い」というメッセージがあるそうです。そして、そんな自分に近づくためのサポートをしてくれるのがお釈迦様の言葉であり、仏像。その教えをよりカジュアルに伝えてくれるのが仏像オタクニストなのです!

▲寺社フェス「向源」トークショー

【その②】 仏像との出会い、そして再会

 ではなぜSALLiAさんは仏像オタクニストを名乗るようになったのか。それには2017年の人生最大のピンチが影響していると言います。エステへ行き束の間のリフレッシュを楽しんだ翌日、目が覚めるとなぜか足に力を入れることすら、まともに立つことすらできなくなったそう。自らの人生を恨み、苦しみました。しかし、SALLiAさんは未来を諦めませんでした。足は不自由でも、心ひとつで幸せになる方法が必ずあるはずだと。
 考えを巡らせていたところ、ふと頭をかすめたのが、20歳の頃に出会い、それから趣味として時々足を運んでいた“仏像さん”でした。 短大の卒業を控え、知識欲が高まっていた当時、ラジオで若い女性達の仏像ブームを知ったSALLiAさんは、自らも仏像さんに会いにいくことに。そして、その前に立ち寄った本屋で手にした1冊の仏像関連の本に衝撃を受けたそう。

「そのとき見たのが京都の蓮華王院 三十三間堂の千手観音坐像だったのですが、涙が止まりませんでした。」

 20歳の女性が仏像を見て涙するって、なかなかないような…。

「音楽は人によって受け取り方が違いますよね。それは仏像も同じで、見る人によって表情の感じ方が変わるんです。当時の私も様々な悩みを抱えていたので、千手観音坐像を見たときに心に響くものがありました。」

 それから定期的に仏像さんに会いに行くなどしていたものの、もちろん“仏像オタクニスト”を名乗るなどとは当時思うこともなく…。けれど足の事故により、より深く仏像や仏教について学びたいと考えたわけですね。

▲推し仏像「東寺 帝釈天」とSALLiAさん

【その③】「仏像オタクニスト」の誕生

 独学で仏教について勉強をしていく中で彼女の救いとなったのは、「待っていても救世主は来ない」というお釈迦様の教えでした。…えっ救世主が来ない?

「“救世主は来ないけど、自分のことは自分で救っていける”。自分で自分を救えると思ったら希望が湧いてきませんか?」

 懸命なリハビリの末にアーティストとしても復活を遂げたSALLiAさん。ですが、それ以前も座ったままでも可能なラジオの仕事は継続していたとのこと。
 そんなある日、ディレクターさんから「こんなにラジオの原稿が書けるならライターもできるよ」と声を掛けられます。そう、彼女はずっと自らのラジオの台本を執筆していたのです! その言葉を受け、自分のように救いを必要とする人に向けた仏像・仏教をテーマとする執筆をしていこう、仕事にするなら肩書きを作ろう!と決意。そうして生まれたのが「仏像オタクニスト」。この一歩はSALLiAさんのライター人生の始まりでもありました。

【その④】 磨崖仏保有数全国1位の大分県だからこそ!気軽な仏像の楽しみ方

 仏像の中でも最大級の大きさを誇る磨崖仏。実はその磨崖仏が全国で最も多く存在するのが大分県なんです! ちなみに磨崖仏とは、自然の巨石や岩壁に彫刻した石像の一種のこと。せっかくなので、私たちもその魅力に触れるべく楽しみ方を教えてもらいましょう。

「仏像の面白さと言えば考察ですよね。」

 コ、コウサツ…?

「仏像とひとまとめにしても、石の材質によって仏像さんの表情は異なります。例えば臼杵市にある臼杵石仏は凝灰岩に彫られているので、どこか木材のような柔らかさがある。そこからその土地の歴史などを読み取るのが面白いんですよ!」

 な、なるほど〜! でもそれってビギナーには少しハードルが高くないですかね…?

「えっ。どうしてですか? 事前に知識を入れていく必要はないですよ。真っ新な状態で会い、後から答え合わせをするのが良いんです。間違っていたとしても自由な考察が大事だと思うから。この仏像さんにこのタイミングで会ったことにはこんな意味があるのかもしれない、とか。人との出会いと同じですよ。」

 大分県内にはいたるところに磨崖仏があるので、まずは身近な仏様を訪ねてみてはいかがでしょう。

【その⑤】 SALLiAが教える「おすすめ仏像in大分」

 SALLiAさんが1番好きな磨崖仏は、豊後高田市にある熊野磨崖仏。個人的に日本で1番優しい顔をした不動明王様だと感じているとか。

「不動明王ってその姿を見た子どもが泣き出してしまうくらい、基本的には怖い顔をしています。でも熊野磨崖仏には温かさを感じるんですよね。」

 駐車場から熊野磨崖仏までの道のりは険しい山道が続き、多くの石段や坂道を進む必要がありますが、ぜひ足を運んでみてください!

▲豊後高田市にある熊野磨崖仏

まずは自らの「生きグセ」を見極めよ!

 生きづらさは「生きグセ」とも表現するSALLiAさん。

「例えばダイエットをしたいのに、つい食べてしまうことがあるじゃないですか。これが生きグセです。私の場合は起こったことを何かのせいにしたくなる癖があり、足の事故のときもそうでした。でも痛みと苦しさを連結しているのは自分の心。そんなときは感情を分ける作業をするんです。『痛い』で感情を止め、『苦しい』まで発展させない。そうすれば、この痛みには何か意味があるのでは?という新しい視点で物事をとらえることができます。」

ライターのリアルなお悩み相談!

 もう私、SALLiAさんから神々しい光が見えてきています。だから私(34歳・既婚)の悩みを聞いていただこうかと…。 超現実的な私の悩みは、2歳の娘との関係について。子どもとわかっていても本気でイライラして、毎日ガミガミ怒ってしまいます(恥)。

「どうして自分が怒っているのか?を突き詰めると答えが出てくるかもしれません。きっと今は、イライラするのは良くない→でも止められなくて自己嫌悪という位置にいますよね。」

 娘がコップを倒したりするともう…キィィッ(怒)!!となってしまって…。

「お子様がいると怒る場面があるのは当然のこと。でもその後に自己嫌悪が襲うということは、『正しく怒れていない自覚』はあるわけですよね。感情に任せて怒るから後悔してしまうんですよ。」

 私自身に余裕がないから、つい感情的になってしまうんですよね…。

「私の場合は相手が思い通りに動いてくれないとイライラするのですが、そんなとき、じゃあ私は相手の思い通りに動いてる?と考えます。するとそんなことはないわけで。だったらそこで怒るのはナンセンス。自分も相手も苦しくならない選択をする、相手に注意しないといけないことがあるなら感情を入れずに伝えるということを意識しています。お子さんに対しても、“怒る”のではなく、しっかり自分の中に基準を持って“叱る”と良いと思います。」

 確かに、イライラに任せて怒った結果、別の問題に発展してしまうことがよくあります(汗)。

「怒るときは“〜したらダメ”という言い方をすることが多いと思いますが、仏教にはマストがありません。仏教が唱えているのは、あくまでも『○○をしたら、ろくな事がないからやめた方がいいよ』ということ。お子さんの成長や身の安全を守るために、必要な場面でそれを伝えてあげたら良いと思います。」

 …これからは腹を立てずに言います(涙)!!!

最新楽曲のPVを大分で制作

 脱線してしまいましたが、とても清らかな気分です。そして質問の振り幅が大きく申し訳ないのですが、故郷への想いが詰まった楽曲についてもお話を聞きました。
 1月にデジタル配信された『久遠』は、SALLiAさんが率いる日本伝統文化集団「Wabi-SabiArt JAPAN」の映像テーマソング。チームには様々なプロフェッショナルが集い、日本人が受け継いできた精神や絆を再認識しながら、日本だけでなく海外に向けてもその尊さを発信することをテーマとしています。SALLiAさんの撮影シーンは大分で、彼女のルーツでもある別府市の海岸、さらに玖珠郡玖珠町の慈恩の滝が舞台なんですよ~。

▲日本伝統文化集団「Wabi-SabiArt JAPAN」のメンバー

「今はどこにいても世界と繋がれる時代。だからこそ私が大分に生まれた意味、大きく言えば日本人であることの意味、精神について考えることが最近は多くて。その思いを表現したいと思い、カタチになったのが『久遠』です。特に大分の撮影シーンはお気に入りで、改めて故郷の良さがわかりました。今後も、私なりの視点で大分の魅力を伝える活動にも力を入れていきたいです!」

 ……SALLiAさんの想いに心打たれました。我々は“大分の魅力を伝えたい”という目的を持った、まさに“同志”!!今回のインタビューで心を通わせた(と信じている)編集部とSALLiAさん。せっかくなので「We are Oitan」のテーマソングを一緒に制作することに!紆余曲折、試行錯誤を経て、音源がようやく完成しました。パチパチパチ〜!

↓ みなさん、こちらからチェックしてみてください ↓

「We are Oitan」(作詞/作曲/編曲/歌:SALLiA)

おわりに

 多くの肩書き、またそれらの不思議な並びから、一体どんな方なのか気になって仕方がなかったSALLiAさん。けれど彼女がインタビュー中に「私の肩書きの多さは挫折の数を表している」と言葉にしたように、彼女の選択には全てにおいて大きな理由がありました。県内のCMソングの作詞・作曲・編曲、歌も担当するSALLiAさんの視点から発信される大分の魅力、そして今後の活動がとても楽しみです!

SALLiAさんのプロフィール

別府市出身・在住の32歳。アーティストデビュー後は、精力的にライブ活動を行う一方で2012年にテレビ番組TOKYO MX「サンデーブレイク」のエンディングテーマ曲に「アクアマリン」が起用。2014年にはスターダストピクチャーズ制作の映画「眼-まなこ-」の主題歌に「my sweet boy」が決定。2016年リリースの1stアルバム「人間宣言。」のリード曲「イデア」がUSEN週間インディーズランキングで1位を獲得。その他ライター、仏像オタクニストなど、さまざまな肩書きで活動中。

◎著書紹介
『生きるのが苦しいなら〜仏像と生きた3285日〜』

著者が自分の人生で経験した数々の苦しみを通して得たヒントや、仏像から学んだよりよく生きるための答えが詰まった一冊。自叙伝に仏像、自己啓発という3つの要素が詰まった本には、今の時代を生きるヒントが多く記されている。

『アラサー女子、悟りのススメ。救われたいなら会いに行け!』

女子力にモテコーデなど、アラサー女子は世間が抱く様々な常識に日々縛られている。そんな生きづらさを仏像を通して乗り越えよう!と唱えた一冊では、著者オススメの仏像を実際に紹介しながら、婚活や母になる難しさなどを執筆している。

【ミニコラム1】温かな表情に癒される、国宝・臼杵石仏

日本に現存する磨崖仏の中でも、最初に国宝に認定されたのが「臼杵石仏」。石材としては軽く柔らかな部類に入る凝灰岩に彫られているため、そこに込められた当時の人々の信仰心や岩の持つ厳しい生命力が光りながらも、どこか穏やかで優しい表情をされています。誰がどのような目的で造営したのかは現在までわかっておらず、今も多くの謎に包まれているとか。SALLiAさんに教えていただいた通り、ぜひ考察も楽しんでみてください!

(所)臼杵市大字深田804-1
(アクセス)大分ICより車で約30分、臼杵ICからは車で5分

▲国宝・臼杵石仏

【ミニコラム2】大分市内で出会える国指定史跡の磨崖仏・大分元町石仏

大分市街地から程近い、上野丘台地東端の岸壁に刻まれた石仏群。本尊の薬師如来は平安初期の作と推定されているそうです。臼杵石仏と同じく凝灰岩に彫られた磨崖仏ですが、丸い顔面に弓状の眉、厚いまぶた、切れ長の伏せ目など表情や雰囲気はやはり異なりますね! こんな時代だからこそ、休日の目的地を仏像さんに…。新たな自分を知ることができるかもしれませんよ♪

(所)大分市元町2-2
(アクセス)大分バス利用。大分〜古国府循環行き「薬師堂前下車」徒歩約5分

▲大分元町石仏

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