別府市

株式会社 synergiez(シナジーズ)代表取締役
竹藝家
こじまちからさん

#別府 #工芸 #竹細工

竹細工に新たな革命の息吹
工芸品の未来を繋ぐイノベーションを

大分県を代表する伝統的工芸品・別府竹細工。籠や美術品など、大分県特産の良質な竹材と多様な編み技術で、日本のみならず海外でも日本の伝統美として注目を集めています。今回ご紹介するのは、この世界で、時代のニーズに合った新しさをプラスしながら活動を続けている竹藝家のこじまちからさん。別府市内にアトリエを構え、工芸品の未来を見据えながら、竹と向き合う毎日を送っています。

───こんにちは。今日はよろしくお願いします。(アトリエを見渡して)すごい広いですよね!

もともとは自分のアトリエとして借りてたんですけど、3年前にものづくりコワーキングスペース「synergiez」として誰でも利用できるシェアアトリエをオープンしました。木工や手芸用の道具だけでなくレーザー加工機や3Dプリンタなどもあるので、ものづくりをしたい人や、 企業の方にもご利用いただいてます。

───プロフィールをざっと拝見したんですが…演奏家という顔も持ってらっしゃるんですね?

学生の頃エレキベースやコントラバスを始めて、演奏家としては20年ぐらい活動しています。前職はアミューズメント業界で仕事をしてまして、仕事の合間にツアーに参加したりしながら10年間は仕事と演奏家の活動を両立してました。

───で、どうして、全く畑違いの竹工芸の道へ?

演奏家としてヨーロッパツアーに参加する機会があり、その時外国の方々から「日本大好き!」「日本は素晴らしい製品が多い」という話を聞いて、自分も日本に関わる何かをしたいと感じたんです。改めて自分の周りを見渡した時、身近に竹工芸という素晴らしい工芸品があったことに気づいて。 出会うのに少し時間はかかったけど、年齢を重ねて竹細工の魅力に気づけたと思うんです。
もともとDIYも、ものづくりも好きだったんですが、竹工芸の作品を見た時どうやって作っているのか想像できなくて・・・。どんどん興味が湧いてきて、仕事を辞め別府市の竹工芸訓練支援センターに入学しました。そこから2年間は竹にどっぷり浸る毎日でしたね。以前勤めていたアミュージメント関係の仕事は、最新の技術を駆使した世界。かたや、全てが手作業の超アナログな竹工芸の世界。演奏活動は音楽で、手工芸はものを作ることで表現する。基本的に両方とも練習を重ねて表現力を習得していくのもなので、そこに共通点も感じました。人間の手で編み出される、最高に面白い世界だと感じました。

───今はどのような活動をされているんですか?

行政と関わってお仕事をさせていただくことも多いですね。昨年、一昨年は大分県が行なっている「デスティネイションキャンペーン (JRと地域観光関係者、地方自治体が協力する観光キャンペーン)」で竹細工の魅力を伝える活動にも参加させていただいてますし、ラグビーW杯やオリンピックでの制作物もありました。2020年の東京オリンピックの際は、公式ライセンス商品として大分の伝統的工芸品の商品を制作しました。

───いろんな依頼が舞い込んでくるんですね

様々な店舗やオフィスのインテリアや、今は船のエントランスのオブジェを制作中です。大きい作品は一人で作るのは難しいので、工芸家やクリエイター仲間とチームで動いています。基本的に竹細工は職人一人の仕事なんですが、イレギュラーな仕事や大物を制作する仕事にも挑戦しないと、新しい仕事が生み出せないですからね。伝統工芸産業を取り巻く状況は厳しいと思うので、次世代に継承していくためにも、新しいことにチャレンジすることが大事だと思っています。このアトリエは、竹工芸や竹素材と社会の接点を作りたくて、僕が作業している姿をみんなに見てもらえるようあえてオープンにしています。竹にもっと触れて欲しいし、知って欲しいという思いからです。別府の竹細工は民具、美術品、テーブルウェアとして使われる盛り籠など、種類は多様です。最近ではバッグやアクセサリーなど服飾系のアイテムを作る職人さんもいます。伝統は守りつつ、時代に合わせて変わっていくことが大事だというスタンスは、僕の中で揺るがないですね。生まれも育ちも大分で、大分愛が強いので「地元のもので地元を活性化させる」ことが理想だと考えています。

───こじまさんの竹細工のこだわりは?

染色をしている竹と染色していない竹を織り交ぜ、色の変化やニュアンスを楽しんでもらえる作品が多いと思います。色って感覚的にわかりやすいじゃないですか。竹細工をもっと気軽に手にとってもらえるよう、キーホルダーや名刺ケースなどキャッチーなものも作って販売しています。実は、竹細工は編む作業は全体の2割くらいで、材料の竹ひごを作る作業が8割なんです。竹の色や硬さ、形など、どれ一つとっても同じものはありません。それを竹ひごにしていくのでとても奥の深い作業なんです。竹の選び方、削り方、絶妙な力の入れ具合で竹ひごのニュアンスも変わってくるので、それが作品にも影響してくる。 だから、竹ひごを削る作業はとても大事なんです。特に大きな機械を使うこともなく全て手作業なので、作業場はとても静か。竹を割く音や削る音は、なんとも言えない綺麗な音がするんです。「自然のものに触れながら、五感に響く仕事」ってとても豊かだと思うんですよね。楽器の演奏も工芸の表現活動も終わりのない世界。努力すれば永久に表現力を塗り替えていける世界だと思うんです。「代えが効かない唯一無二」のパーソナリティが大事だと思い、そこをずっと意識しています。

───海外への出展もしていると伺いましたが

一昨年はパリとニューヨーク、去年はアムステルダムに出展しています、今年は日本の職人と国内外のデザイナーを繋ぐコラボレーションプロジェクト「ジャパンクリエイティブ」さんによる展示がイタリアのミラノで4月から開催されるんですが、そこに参加させてもらいます。先日もフランスから協業するデザイナーが来て打ち合わせをしました。またクラフトツーリズムの企画にも参加していて、海外からのお客さんのワークショップなども 開催し、世界に別府の竹細工の魅力を発信しています。

───今後決まってる活動予定、そして夢や展望などあればを教えてください

竹細工に止まらず、竹の可能性を模索しています。大分県は特に竹に恵まれている地域ですが、資源 として活用し循環させないと、いい竹が取れなくなるし、果てはいい竹細工も作れなくなります。今、3Dプリンターの造形に用いる材料を竹で試作し、そのプロジェクトも進 めています。この業界もオープンイノベーションが必要だと思っているので、様々な角度から新しい可能性が見出せる広い視野を持ち続けたいです。
今年の7月には別府駅前の「手湯」のドームの制作を依頼されています。この作品で僕がこれまでやってみたかったことにチャレンジしたいなと思っています。それと、竹で楽器も作っているんですよ。竹で作ったコントラバスの演奏会を東京や福岡でしたこともあります。忙しくてなかなか実現できていないんですが、演奏会もまたいつか復活させたいですね!

───大分市から別府市に移り住んで7年。別府はどうですか?

別府市は大分市と比べていい意味で「変人」が多い(笑)。その人たちと話すのがすごく楽しいし刺激をもらっています。また、チャレンジする姿勢を応援してくれる空気感が好きですね。街もコンパクトにまとまっているし、温泉も湧いて生活環境もいい。大好きです!

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