豊後大野市

株式会社LAMP
LAMP豊後大野/REBUILD SAUNA
支配人 髙橋ケンさん

「豊後大野市はサウナのまち」を日常に落とし込め! 伸びしろしかない町で旋風を巻き起こす異端児

家を出発して約2時間。「かなりの山道なので」と事前に聞かされていたので覚悟はしていたけれど、車酔いするくらいのクネクネ道をひたすら運転。途中、車一台がやっと通れるぐらいの狭い道でトラックと離合し、ちょっと心折れそうになりました…。豊後大野市緒方町の祖母山麓の山奥で、宿泊施設「LAMP豊後大野」の支配人と、アウトドアサウナ協議会「おんせん県いいサウナ研究所」の所長を務める髙橋ケンさん。温泉のない町・豊後大野市を「サウナのまち」として盛り上げている立役者でもあります。茨城県から移住して6年目。なんでこんな山奥に?そしてなんでサウナ?? どんどん湧いてくる「なんで?」を解決すべく、ケンさんに会いに行ってきました。はぁ、無事に辿り着いてよかった!(帰りもあるけどね…涙)。

───初めまして。途中、トラックと離合しましたよぉ(なんの報告?)。無事についてよかったですー(涙)。

お疲れサマでした! 多分鉱山を工事してるからトラック通ってたんですね。帰りぐらいは工事も終わってトラックも山を下りてると思うんで、大丈夫だと思いますよ。

───フゥ、良かった(安堵)。ところで、ケンさんは(初対面なのに馴れ馴れしくて失礼しました)移住してどのくらいになるんですか? その前はどこで何をしてたんですか?

ここに移住して6年目です。僕は茨城県出身です。東京の大学を卒業して、テレビ誌の出版社に就職しました。当時は就職氷河期で数十社ぐらい受けたけどなかなか決まらず、出版業界に勤めてた父の紹介で入社したんです。自分なんて実力じゃ絶対に入社できなかっただろうなと思う競争率の高さで、狭き門を実力でくぐったメンバーたちが同期にいました。同期に負けないよう早く出世してやる!って思ったのは覚えてます。入社してすぐに配属されたのは番組表を配信する部署で、毎日徹底した校閲作業を行う仕事でした。その後、カルチャー誌の編集部に異動して、当時の出版業界としては早い立ち上げだったアプリメディアを出版する部署へ。システムを構築しながらコンテンツも同時に作らないといけなかったので、すごく大変でしたね。そこから子会社へ異動。局長・編集長クラスだった人が定年後に再雇用されていた会社だったので周りはベテラン揃い。一人で本を苦もなく一冊作れるスペシャリストに囲まれてました。その中で、書籍と電子書籍を一緒に作る仕事をしていました。一人で本を作り上げるノウハウを学べたのは、僕としてもすごく良い経験でした。その甲斐あって自分で企画した震災関係の本を出版することもできましたしね。

───出版業界って大変ですよね…。私も16年間その業界にいたのでわかります。

月刊誌のサイクルはマジでやばかったです。誌面に穴を開けられないから逃げ場がないし、常に時間に追われて鬱になる人もいましたし…。超ハードワークなのに働けど給料は上がらないし、理不尽な仕事環境の改善もなくて編集部は常にヘロヘロ。その中で「なんのために仕事してるんだろう」って、常に辞めたいと思ってました。で、子会社から本社に戻ったタイミングで、テレビ誌のインターネット媒体の編集長を任されたんです。当時はまだ知識も浅かったので、ネット広告で収益化することなども理解できなくて、わからないことだらけで…。周りにもわかる人がいないから、自分で勉強したいと思っていたタイミングで「LIG」というウェブ制作会社との出合いがあり、転職することに。それが32歳のときだったかな…。

───転職先の「LIG」ではどんなお仕事を?

ウェブ編集者として外部メディアの編集をしてました。記事一つに対するPV数が数字として出るので、毎回面白い企画でホームランを打たないと!というプレッシャーがすごかったです。ここは紙媒体とは違うところ。今までのキャリアが否定されている感じで、打ちのめされました。ある日社内で「旅をしながら記事を書く仕事をしてみない?」と言われ、面白そうだから引き受けたんです。ウェブ制作の会社といっても、コンサルティングからシステム、アプリ開発、コワーキングスペーズ事業やゲストハウス事業など多岐に渡る事業を展開していていて、その中の一つでもある地方創生事業の仕事を任されることに。そこで大分県の移住定住のPRイベントを行ったり、現地で取材をして記事を書くという仕事に携わって、大分県との縁ができたんです。

家族で大分に移住してきたケンさん。趣味はブラジリアン柔術。セルフロウリュができる本格フィンランド式サウナ「REBUILD SAUNA」は、廃材を再利用し、職人や仲間たちとできる限りDIYで作り上げた

───だんだん豊後大野市に近づいてきましたね。移住までの経緯を教えてください

大分に来たとき、県のある職員さんから「面白い場所があるから」と連れてこられたのがココでした。登山客の宿泊所として使っていたようですが、随分さびれていて。「ここを大人の隠れ家みたいにしたいんだよなぁ。何か活用できないか」と言われたんですけど、場所も場所だったし(笑)無理ですねって一度断ったんです。そしたら僕が参加してない飲み会で「幽霊屋敷とかにする?」とか話が盛り上がって、ゲストハウス事業を展開してるので、「LAMP豊後大野」としてやっていこうと。で、僕は支配人として来ることになったんです。

───豊後大野市とつながったー! で、なぜ豊後大野市をサウナのまちにしようと?

2018年の夏ぐらいに、会社主催で、車で全国を回って社員を集めるっていうキャラバンがあって。そのときに福岡に来てた同僚とサウナに行くことになったんです。僕は嫌いだからと言っても「手取り足取りサウナの入り方を教えるんで」と連れて行かれて。サウナ入ったり、水風呂入ったり、休憩したり、ロウリュ体験したり、サウナの流儀を教えてもらったんです。その日、大分に帰っている途中、眠くなったのでサービスエリアでひと眠りしようと思ったとき、「サウナってすごく気持ちいいじゃん!」と、サウナの余韻が体を駆け巡って。そこからサウナにハマって、一人でも行くようになりました。で、2019年にサウナのイベントをやったら反響があったので、サウナが豊後大野にマッチすると思い、3ヵ年で計画を立てました。まずは敷地内にサウナを作ることを決めて動き出し、2020年3月に協議会「おんせん県いいサウナ研究所」立ち上げ。翌年には豊後大野市が日本では初めてとなるサウナのまち宣言をして、今年の2022年は市内飲食店にご協力をいただいて、サウナのお客様が飲食店を巡れるようにサウナ飯を展開したりしました。この2年間、すごいスピード感を持って進んできました。

───稲積水中鍾乳洞のサウナや、川を水風呂としたサウナなど、それぞれの個性を生かしたサウナがSNSでも話題になって県内外からサウナ好きが集まってますよね! 活動をしてきて実感は?

協議会に参加している施設全部で、2022年の来客者数見込みは約8000人です。初年度の2020年は800人ぐらいだったので、そう考えると2年間で10倍の人が豊後大野市に来てくれてるので、すごいと思いますし嬉しいですね。

───豊後大野に住んでみて、どうですか?

田舎です(笑)。でも、ずっと田舎に住みたいと思っていたし、農業もやってみたいと思っていたので、やりたかったことが実現しました。宿泊施設で提供するお米は、自分たちで作っています。すごく大変ですけど(涙)。最初は自給自足の生活をとか言ってたけど、無理ですね。ほんと、農業って大変だと実感しました。「サウナで忙しくなってきたからお米はもうやめよう」って言いながら、毎年作っていますけどね(笑)。

───これからやってみたいこと、夢はありますか?これからやってみたいこと、夢はありますか?

「LAMP豊後大野」自体は、冬の稼働率がまだまだなので、その伸びしろを伸ばしていきたい。どうしても冬は落ち込む時期ですけど、冬のサウナは最高なので、サウナ好きな人にもっと認知を広げて、来てもらえたらと思います。たまに勘違いされるのですが、山奥だけれど山の上じゃないので(笑)雪は年に1回積もるか積もらないかです。だから道は冬でも通れます。「おんせん県いいサウナ研究所」としては、連携できるところがまだあるし、サウナでまだまだ面白いコンテンツができると思っていて。3カ年計画にも入ってるけど、サウナ土産を広めていけたらと考案中です。新たな商品を開発するんじゃなく、地元にもともとあったいいものに再び光を当てて、サウナ土産にしてもらおうと思ってるんです。お土産を買って帰ることで、家で豊後大野のサウナの話で盛り上がって「豊後大野=サウナ」「サウナ=豊後大野」って印象が残せると思うんです。その意識を日常の中にいかに落とし込めるかがすごく大事だと思うんですよね。昔、家に観光地の名前が書かれた三角形のペナントがあったじゃないですか。あれって「あそこに行ったな」と常に思い出させるためのものだと思うんです。日常の中にある「思い出コレクション」みたいな。情報の流れが早い現代では、思い出をSNSで発信しても、すぐに流されて忘れてしまう。だったら、形に残るものを強制的に残しておきたい。「豊後大野はサウナのまち」と覚えてもらえるようにペナントや提灯を作りたいな(笑)。大人の本気の悪ふざけをしていきたいですよね!

───やりたいことが山積みですね!

地域と連携して、来客数が増えることで地元にお金が落ちて、経済が回って、豊後大野市の税収が増えて公共工事やサービスなどインフラが整備されていくというのがサウナの構想なんです。さらに教育と福祉も充実すれば、市民の幸福度も上がって移住者も増えてくる。そうすれば経済も潤って、地方が抱えてる問題が解決できると思うんですよね。その第一弾が、行政によるサウナのまち宣言だったんです。何年かかるかわからないけど、サウナで有名なフィンランドの街と姉妹都市を結んで、向こうの教育や福祉を学んで導入すれば、最先端のそれらが受けられるまちになると思うんです。サービスが充実すれば、仕事を引退した人たちや子育て世代の人たちが移住して人口も増える。そうやって、豊後大野に住んでいるみんながハッピーになれるまちになっていくと嬉しいです!

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LAMP豊後大野
豊後大野市緒方町尾平鉱山57
電話0974-47-2080
HP https://lamp-guesthouse.com/bungoohno/

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