大分市

高山活版社 代表取締役社長 高山英一郎さん

#デザイン #活版印刷

デジタル化に逆行する、超アナログな現場に 満ち溢れていた“活版愛”

金属製の活版文字判がずらりと並ぶ工房には、懐かしいインクの香りが漂っている。
訪れたのは「高山活版社」のショールームを担う活版室。
工場で存在感を放っているドイツ製の印刷機は、50年ものだとか…。

「高山活版社」の創業は1910年。県内で一番古い印刷会社だ。
デジタル印刷では出せない凹凸や、文字のかすれ、絶妙な色合いなど、細やかなニュアンスを紙の上で表現できるのは、職人たちによる丁寧な手仕事によるもの。そんな高い活版印刷の技術が認められ、大分のみならず、日本中のデザイナーやクリエイターたちからご指名で仕事の依頼が入る。

活版への熱い情熱と愛に溢れた、6代目社長の高山英一郎さん(42)。
まるで少年のような瞳で語ってくれた活版印刷の話は、とても興味深いものだった。

(活版室の扉を開ける) わ! すごい! なんかワクワクします!

これはイギリス製の活版印刷機です。あれは日本製の印刷機。どちらも手動です。「活版、活版」ってアピールしてきたら、「引っ越しで捨てるから、これ引き取って!」と、いろんなところから活字や印刷機が集まってきたんです。それをありがたく活用させてもらっています。
 実は、これまでに何度か起こった地震で、並べていた活字が床に落ちてしまってもう元の場所には戻せないんですよ(涙)。床に並んだ箱の中に山盛り入ってます。

えー、そんなことがあったんですね(涙)確かにこれをもとの位置に戻すのは至難の技…

職人さんは、これら多くの活字の中から指定の文字を探して、文字組を行います。デジタルデータからオリジナルの凸版を作ることもできますが、活字活版を希望される場合は、数え切れないほどの活字の文字を組み合わせ、印鑑みたいなものを作るんですよ。そしてこの手動の印刷機で印刷します。職人技です。

活版印刷の魅力って、どんなところですか?

活字が新品だったら文字がシャープに出るので、イラストレーションの文字と大差ないかもしれません。でも、よく使われる文字だと摩耗しているので文字に丸みが出たり、文字間に均等ではない空間ができたり、それが逆に味わい深い活版印刷の魅力だと思います。しかし昔は、印圧をかけすぎないものが、いい活版印刷だと評価されていたんですよ。それも加えてお伝えしておきたい、活版文化の一つです。
 この前、ある塗装屋さんの名刺を製作したんですが、デザイナーさんからの指示で、刷毛の形を紙に押し込んでほしいと依頼があり、完成品は個性的でおしゃれな名刺になっていました。私たちの想像を超えた活版の利用方法をデザイナーさんから教わることで、新しいアイデアも生まれます。この仕事の醍醐味でもありますね。

印刷会社という枠にこだわらず、オリジナルの文具も手がけていますね

会社の組織を作り直そうと、2年前にリブランディングプロジェクトを立ち上げました。その中のミッションの一つが「オリジナル商品を作る」ことでした。それがこの『NOT A NOTE』です。万年筆やペンなどを紙に走らせた時に味わいを感じるノートを作りたいと、紙の質感にとことんこだわり、活版印刷とオフセット印刷で仕上げました。
 コロナの影響で、売り上げの柱になっていた結婚式の印刷物の受注が激減し、正直、経営は苦しい状況です。活版を復活させデザイナーさんとの仕事を増やし、会社の経営を継続させていきたいという方向性が見えてきた矢先のコロナでした。社内の士気も下がり、そこから抜け出したくて『NOT A NOTE』のプロジェクトを立ち上げたんです。「おしゃれで、ちょっと変わったものを作る、こんな印刷屋があるんだ」ということを、遠方の方や、多くのデザイナーさん知ってほしい…という狙いもありました。
 活版を復活させる前までは、デザイナーさんと一緒に仕事するなんて想像もできなかった。でも、今はデザイナーさんとお仕事を共にすることでいろんな可能性が広がり、立会いの元で「もっとこうしたい」というニュアンスを一緒に作り上げていけるのが、他社にはできないうちの最大の強みだと自負しています。正直手間がかかる仕事ばかりですけど、現場で職人さんと話をしてもらいながら作り上げる工程が面白いと感じてもらっているんだと思います。こちらからも「もっとこうした方が面白くない?」と、想像を超える提案をしながら、常に遊び心を忘れずにいたいですね。 

2年前に掲げたミッションに込めた「情報を伝える印刷から、情緒を伝える印刷へ」という想いを自らが体現するべく製作したカンパニーストーリーブック。クリエイターたちと一緒に作られたクオリティの高い冊子からは、高山活版社の心意気を感じる 

チーム制にし、商品案をプレゼン。その中から生まれた「NOT A NOTE」。
手に取ると、手作業で生まれる温かさがじんわりと伝わってくる

社長の今後の夢や野望は?

仕事の面で言うと、活版印刷機が回せるようになりたいですね。入社して10年ですがずっと営業畑だったので…。
 それと、紙への印刷物とは別ですが、実は防災用のアルミシートを作ってるんです。「あったか銀紙」という商品(銀色の防寒ブランケット)なんですけど、シートには被災後に自分が生き残るために必要な情報が印刷されているもので、今、自治体などに営業をかけているところです。NHKの全国放送で紹介され、今は東急ハンズでも販売されています。
 1m×2mの銀紙なんですが、折る作業がとても大変で…。その作業を、就労支援施設にお願いしています。
実は僕の息子がダウン症なんです。障がい者雇用の勉強会などにも参加してたので、どこかで自分の息子と重ねていた部分もあって…。だからこそ、この縁は大切にしていきたいですね。
 印刷の受注も減り、実際に今会社は厳しい状況です。だけど、意地でも会社やその家族を守っていきたいし、デザイナーさんと面白い仕事をしながら会社を継続させていきたいという方向性は、絶対にぶれない! 何とかしてそこに到達できるように、今をみんなで乗り切っていきたいです!

「全国の小学校のランドセルにあったか銀紙が入っている」が夢!と高山社長。今後、防災グッズには欠かせないアイテムになっていくだろう

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